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Current Practices and Future Perspectives of Content and Language Integrated Learning (CLIL) in Japan

CLILは、次第に注目を集めています。本サイトは、笹島茂がかかわるCLILの実践やつぶやきを集めたものです。参考にしてください。

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2014年3月8日土曜日

沖縄・名桜大学でCLIL

2月20日に沖縄の名桜大学に招かれてFDセミナーでCLILについて話した。名桜大学では、私が話すまでもなく、すでにバイリンガル教育を実施して実績をあげている。大学の雰囲気も沖縄らしくゆったりとした時間が流れているような気がした。特に、CRLA(College Reading and Learning Association)という学生同士で学習を互いに支援するシステムが機能していることに感心した。今回も大変勉強になった。いつものとおりだらだらと記録しておきたい。

さて、FDセミナーであるが、私の話で使用したスライドは本ブログからダウンロードしていただきたい。大学でのCLILということで、昨年三重大学で話したことと重複する。私が強調したい点は、CLILの導入によってドラスティックに英語力が伸びるということは考えにくいということだ。しかし、CLILによって教師も学生も英語や言語に対する見方が大きく変わる可能性があると言いたい。CLILは教育(pedagogy)なのだ。名桜大学にはその素地がすでにあると思う。


私に依頼してくれた先生は公衆衛生の小川先生だ。小川先生は英語の必要性を肌で感じ、学生にもそれを伝えたいと強く考えているようだ。『CLIL Health Sciences』の教科書を見て、CLILに何かあると考えたのだろう。期待に応えられたかどうかは定かではないが、ぜひ小川先生によるCLIL、名桜大学のCLILの発展を祈念したい。

名桜大学のセミナーの主催者は渡慶次先生だ。渡慶次先生は中学の教師をされていたので、教育のことがよく分かっている。研究としてのCLILではなく実践としてのCLILを展開してくれるとありがたい。「英語で英語を学ぶ」のではなく、「英語も学び、将来必要となる知識や技能を英語で学ぶ」というCLILを実践し、CLILの名桜大学としてはどうかと思う。

そこで、バイリンガル教育や内容重視指導(CBI)とCLILのことを少し整理したい。日本でCLILを実施する場合は、やはりバイリンガル教育になるだろう。しかし、これまでのバイリンガル教育とは異なるコンセプトで実施する必要がある。また、単に扱う題材内容やトピックに焦点を当てた指導ともやはり一線を引くべきだろう。

注目するのは、学習者の思考(cognition)である。バイリンガル教育や内容重視指導(CBI)という言語教育の視点を脇に置いて、学習者は何を考えているのかに焦点を当てる。つまり、英語を活用することの意味、英語で学ぶことの意味、英語が上達することの意味を、学習者自身が考える機会を作る。授業で英語を話す、プレゼンテーションができる、ディベートができる、などの表面的なプロダクトだけを見るのではなく、プロセスを教師は考慮する。そのような学習者の思考の活性化を促す工夫をする。

バイリンガル教育や内容重視指導(CBI)も、教材や言語活動に焦点を当てがちであり、ともすると教師主導になる。バイリンガルであれば、母語と目標言語の使用の割合を気にしたりする。CBIであっても、内容と関連して語彙や文法などの指導を考えてしまう。そのような展開を変える意味でも「思考」に焦点を当てる。

次に、「コミュニケーション」である。コミュニケーションは英語でできれば英語ですればよいが、学習者によってはそれが負担となる場合もある。その場合、言語は別にして、コミュニケーションを優先する。意味のやりとりが重要だからだ。混乱するかもしれないが、このような状況から次第に目標言語である英語に移行することを教師がアレンジする。

さらに、「内容」はもちろんであるが、用語を覚えたり、知識を詰め込むことに重きを置くと受動的な展開となり、学習者にとっては「言語」を使うことには結びつかない可能性が出てくる。ここで大切なのが「タスク」ということである。もっと簡単に言えば、学習者がどのような活動をするかを教師がどう演出するかである。

私はこの活動については学習者の特性にある程度ゆだねることが大切だと考えている。つまり、あまり型にはまった活動を提示にしないほうがよいと思っている。何が起こるかわからないということが大切で、学習者自身がいろいろと考えることが「文化」ということにつながると思う。

さて、FDセミナーの後、写真のように名桜大学の先生方と会食した。こちらはとても有意義で、いろいろと教わりました。感謝です。また機会があればぜひお邪魔したいと思いました。名桜大学のCLILに期待します。


翌々日からドイツに調査で出かける用事があったので、沖縄を堪能したかったが、翌日早々に引き上げたが、CLILを広めるためならばどこへでも行きたいと思っている。教師生活もあまり残されていないので、これがさいごの仕事の一つと決めている。